2021-01-01から1年間の記事一覧

砂原庸介「新築がお好きですか?」ミネルヴァ書房

持ち家か賃貸か論争、インデックス界隈でも時折話題になります。 持ち家派の人で、住宅借入金等特別控除を知らない人はいないでしょう。 では賃貸住宅の人に公的な家賃補助ってありますか。実は誰でも使えるようなものはないのですね。生活保護費、入居に所…

南部さおり「親の手で病気にされる子どもたち」学芸みらい社

怖い本でした。 ミュウヒハウゼン症候群をご存じでしょうか。自分は体の調子が悪いと言って医者にかかる。検査しても何も異常が出ない。本人はあれが痛い、気を失った、血痰が出た、気絶したと言い張る。また検査しても異常が出ない。これ以上やることはあり…

武藤北斗「生きる職場-小さな工場の人を縛らない働き方」イースト・プレス

前回紹介した本とは対極にある会社のお話です。 社員は筆者である工場長ともう一人だけ、残りは全部パートさん。そして、「いつ何時に出勤するか、いつ帰るか自由、連絡はしないこと」「嫌いな作業はやらなくてよい」という会社の実録です。筆者曰く、本当に…

川島徹「メーター検針員テゲテゲ日記」フォレスト出版

おかしゅうて、やがて悲しき、という本でした。 テゲテゲは鹿児島弁で「適当に」という意味だそうです。 雨の日も雪の日も台風の日もメーターを読みとり、端末に入力して請求書をプリントしてポストに入れる。メーターは背の届く高さにあるとは限らない。庭…

平澤正夫「日本の牛乳はなぜまずいのか」草思社

スーパーで売っている紙パックの牛乳がまずい、と思った人にはおすすめです。 ちなみに、私はスーパーで売っている130度2秒間などの高温殺菌牛乳は飲みません。生協の配達品であるパスチャライズド牛乳か、デパートで売っている木次乳業の低温殺菌牛乳を飲ん…

アダム・オルター著上原裕美子訳「僕らはそれに抵抗できない-「依存症ビジネス」のつくられかた」ダイヤモンド社

主としてネットゲーム依存症や行動嗜癖に関する本ですが、アップルウォッチを使うと、顔色が悪いのに「12000歩歩かなくちゃいけないのに、今日はまだ8000歩しか歩いていない」といってあと4000歩歩きに行ってしまう。数字に絡めとられて不快を脱するために行…

原田真知子「「いろんな人がいる」が当たり前の教室に」高文研

誰もが同じクラスになりたくない男の子。特に正論を言う子、おとなしい子、容貌の気に入らない子に対して激しく執拗に攻撃する。給食、掃除当番、委員会などの仕事をまったくしない。お気に入りの子には極端に甘えて見せたりするかと思うと、あっという間に…

三田誠広「天気の好い日は小説を書こう」朝日ソノラマ文庫

ワセダ大学文芸科における「小説創作」講義をテープ起こししたとする三部作の一作目。 前半、近代小説の成り立ちから、文学のジャンル分けまでテンポよく紹介されている。現在そこにある小説の意味が、近代小説発祥の由来をたどってくれることで、頭がすっき…

徳川頼貞「薈庭楽話(わいていがくわ)」中央公論新社

ロンドンにて、ラ・ボエームのミミのアリアをメルバが歌うのを聞く。歌は素晴らしいけど、ミミって病弱で小さい若い女性じゃなかったっけ。目を舞台に向けるとメルバの偉大な体躯と隠せない年齢、うーん。 大西洋航路にて。船酔いで苦しんでいると、隣の船室…

佐藤功「教科書御用達小説の主人公はクズでヘタレばかり」河出書房新社

芥川龍之介「羅生門」 ・羅生門に一匹の蟋蟀(こおろぎ)が止まっていたわけは。 ・門の下で雨宿りしていた下人が途方に暮れていた本当の理由は。 ・なぜ下人の右頬のにきびが描写されているのか。 ・なぜ下人は死人の髪の毛を抜いて鬘を作って売ろうなどと…

中村すえこ「女子少年院の少女たち」さくら舎

私この本で「虞犯(ぐはん)」という言葉を初めて知りました。犯罪を犯すおそれのある者だそうです。犯罪を犯すおそれがあるだけで少年院へ入れられてしまうっていきすぎじゃない、と思いますよね。それは少年院を罰を受け反省する場所だと思うからです。 こ…

池内了「宇宙研究のつれづれにー「慣性」と「摩擦」のはざまで」青土社

戦争と科学者の協力に焦点をあてた本。 みなさん慣性の法則を知っていますか。すべての物体は力を加えない限り、その運動を持続するってやつです。コペルニクスの地動説に反対する人たちが地球がクルクル回っているなら静止している空気は後ろにふっとんで暴…

下地毅「ルポ東尋坊」緑風出版

福井県の東尋坊は、観光名所です。 そして自殺の名所でもある。 東尋坊には「救いの電話」と呼ばれている公衆電はボックスが2台ある。 ここに十円玉と「NGO 月光仮面」という名刺を置き、週に2回のパトロールをしている人たち。パトロールは、“月光仮面”一人…